テーマ:「若年層の肥満予防のための運動と食事」

慶應義塾大学スポーツ医学研究センター教授 勝川史憲先生

肥満予防のための運動

 男性23.2%、女性9.5%。これは運動習慣のある20歳代の男性と女性の割合です。

運動習慣のある者の割合(性・年齢階級別)

 
肥満を気にして太らないようにしているといわれる20歳代の女性が、実は最も運動をしていないようです。
 
肥満予防のための運動は、ウォーキング、自転車こぎや水泳などの有酸素運動が基本です。ウォーキングの場合は、軽く息がはずみながらも会話が可能なくらいのスピード、男性なら時速6キロ、女性なら時速5キロくらいです。一般的な健康のためには1日30分、週5日程度が目標となります。慣れてきたら時間を徐々に増やし、最終的には45分から60分歩くことを目標にしたいと思います。これが肥満予防で推奨される運動量です。 

ウォーキングのポイント!

  ・30分で男性なら3キロ、女性なら2.5キロを歩くペース

  ・一般的な健康のためには週5日が目標

 ・肥満予防には45分~60分を週5日が目標

運動時間は1日の合計時間でよい

 ウォーキングを45分から60分、週5日と考えると、時間の確保がとても大変です。しかし、運動時間は合計ですので、1日の中で何回かに分けて細切れに行なってもかまいません。また、肥満しておらず、高血圧や高コレステロール血症などの病気や喫煙習慣のない人では、1週間単位でまとめて行ってもよいでしょう。
 若い人の場合、ランニングやエアロビクスのような高い強度の運動を安全に行なうことのできる方も多いので、その場合は、ウォーキングの半分くらいの時間で同じエネルギー量を消費することができます。ランニングは、練習方法やフォームを工夫したり、運動能力の向上が見えやすく、走るお仲間もできやすかったり、と運動継続に有利な条件が揃っています。いつでもどこでもできる、という意味ではウォーキングがおすすめですが、長く続けるには楽しさが重要です。自分が好きで、続けられるものを見つけることがポイントです。
 

肥満予防のための食事

 若い人の食生活は西洋化し、脂肪の摂取比率が高くなっています。脂肪は、1gのエネルギー量が9kcalと、炭水化物やたんぱく質1gの4kcalに比べて大きく、少しの重量でも大きなエネルギー量になります。
 ひとりの人が1日に食べる食品重量は比較的一定なので、脂肪の比率が多く重量当りのエネルギー量の多い食事は、過食が起こりやすくなります。食事の脂肪の比率を下げるには、おかずを脂肪の少ない食材から選び、油を使わない調理法を工夫します。それから、ごはんを中心とした主食の摂取をもっと心がける必要があると思います。
 肥満予防のためには、大量に身体を動かしたうえで、ごはんを中心とした食事にするとよいと思います。