テーマ:「思春期の健康とダイエットについて」

早稲田大学総合研究機構教授 福岡秀興先生

誤ったダイエットの起こすトラブル

 スリムな体型は美しさ・健康の象徴と考える女性が増え、最近は中学生や高校生にも、場合によると小学生にまでダイエット志向が強くなっています。思春期の10代の健康状態は、一生の健康を左右しますので、この時期はとても大事です。ところがこの時期に誤ったダイエットを行うと、心身に大変なトラブルが起こります。体重が減少すると、通常は体脂肪が減少しますが、体脂肪量は卵巣の働きと密接な関係があります。
 この図でわかるように、体脂肪率が15%以下になると、急激に卵巣の働きが悪くなります。月経不順や無月経という状態になるわけです。

体脂肪が低くなると月経異常が多くなる

 卵巣の働きが悪くなると月経の異常が起こり、身体にとって大切な女性ホルモンが減少します。10代であっても重症では更年期障害と同じ症状が出てきます。また骨密度の減少も起こります。骨密度は8歳頃から18歳頃までしか増えないことがわかってきました。女性ホルモンは骨にとても大事で、女性ホルモンが減少すると骨密度はどの年齢であっても減ります。一度減った骨量は元へかえることはありません。また、脳には女性ホルモンが不可欠です。更年期に物忘れがひどくなるのと同じで、記憶力の低下なども起こるのです。このように考えますと、この時期のダイエットはとても危険であるといえます。

正しいダイエット法

 思春期には医学的に必要な場合以外は、ダイエットはすべきではありません。「してはいけないダイエット」として、特に「単品ダイエット」とか「下剤を使ったダイエット」などは、絶対すべきではありません。どうしても、ダイエットを行なう必要があるとすれば、まず筋肉を減らさずに、体脂肪率はせいぜい22%くらいまでに減らすということです。第2にリバウンドを起こさないようにすること。第3に、栄養不足を起こさないように必要量のバランスのとれた食事をするということです。

思春期には、一日3食、ごはん食を中心に

 下図は妊婦さんを対象にして行なったごはん食(和食)とそれ以外の食事をとっている方々の摂取栄養の調査結果です。ごはん食をとっている方は摂取エネルギーがほぼ同じであっても脂肪が少なく、身体に必要な微量元素やビタミンを多く含んでいる食事をとっていることがわかります。その意味で、ごはん食(和食)は栄養バランスの大変優れた食生活を実現できるものといえます。

朝食でのごはん食群と非ごはん食群の1日の栄養摂取量の比較

それだけに、思春期の女性には、一日3食きちんと食事をすることと、ごはんを中心に必要な栄養素を十分にとることをおすすめします。