テーマ:「肥満予防にはごはん食 ~ごはん抜きダイエットは太りやすい体を作る~」

京都大学大学院人間・環境学研究科教授 森谷敏夫先生

ダイエットは体の脂肪を減らすこと

 世の中には、いろいろなダイエット法があふれていますが、ダイエットに特効薬はありません。よく、「私は、1ヶ月で10kgやせました」という体験談がありますが、それは、体の中の水分が減って単に体重が減ったというだけです。これをやせたとはいいません。肥満は、体に脂肪が増えすぎた状態ですから、やせるというのは、脂肪を減らすことに他なりません。
 体の脂肪1kgは、約7,000kcalのエネルギーを持っています。10kgの脂肪を減らすなら10kg×7,000kcalで70,000kcalのエネルギーを1ヶ月で消費しないといけません。私たちは一日に消費するエネルギー量を摂取量に合わせて、例えば1,800kcalとすると、70,000kcalを消費するには、70,000kcal÷1800kcal=40 つまり約40日もかかるのです。しかも、飲まず食わずですから、普段の生活はできません。短期間で急激なダイエットは不可能なのです。

体に負担をかけないダイエットは?

 無理のないダイエットをするには、運動と食事を組み合わせることがよいでしょう。運動は、せめて、30分の早歩きをしましょう。これで、100kcalのエネルギーが消費されます。1年で、約5Kgの脂肪が減ります。継続は力なりです。また、食事は、3食規則正しくとること。特に朝食は、きちんととること。ごはんを減らさず、むしろ少し増やすくらいのつもりでとることが大切です。

ごはん抜きダイエットは太りやすい体を作る

 よく「ごはんは、太る」と誤解されていますが、ごはんの糖質のエネルギーは1g4kcalで脂肪1g9kcalの半分以下なのです。むしろ腹持ちもよく、ごはんは、決して太る食品ではありません。また、脳の唯一のエネルギー源は、糖質です。脳は、脂肪をエネルギーとして使えないのです。ですから、ごはんの量を減らし、糖質の摂取量が不足してくると、脳は非常食として肝臓や筋肉に蓄えておいたグリコーゲン、つまり、貯蔵型の糖質を消費します。しかし、「ごはん抜きダイエット」を続けていると、やがて非常食であるグリコーゲンは、枯渇します。そうなると、脳は、エネルギーを確保するために、筋肉それ自体をエネルギーとして消費し始めるのです。つまり、「ごはん抜きダイエット」は、本来、減らしたいはずの脂肪は、そのままで、筋肉をじりじりと減らす。筋肉が減ると安静時に消費されるエネルギーである基礎代謝が低下するため、太りやすい体になっていくのです。ごはんをきちんと食べることこそが、ダイエットの基本です。