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7日本人ともちの深い関係
7-3 もちをつく時期・保存方法で呼び名も変わる

 このほか、餅をつく時期や保存の方法でさまざまな名称の餅がありますから、そのうちのいくつかをご紹介しましょう。

■ 凍(氷)餅
  真冬に、適当な大きさに切って縄で連ねて縛り、水をくぐらせてから屋外につるし、冷凍乾燥(フリーズドライ)させたもの。鎌倉時代から伝わる保存法で、別名、雪餅といわれ、沸騰した湯につけてもどして食べます。最近では、油で揚げてからしょう油をつけて食べたりしています。

■ 寒餅
  年があけ、最も気温が低くなる寒に入ってからつく餅のこと。この寒餅(のし餅の場合は切る)を、寒の冷たい水に漬けて貯蔵すると、いつまでも柔らかく、カビも生えにくくなります。それを水餅と呼びます。

■ かわり餅
  餅をつく時に、穀物、野菜や海草、草木の実や種実、さくらえびなどを入れます。色がつき、風味豊かな仕上りが特色です。

 穀類を混ぜる餅:モチ米にウルチ米を混ぜて蒸してつくと、ウルチ米が完全につぶれず、餅の中に粒状で残ります。この独特の歯ざわりが、なんとも言えぬおいしさを生み、うる餅とも呼ばれます。もちに粟を混ぜると粟餅、黒豆や大豆、小豆を混ぜると豆餅。これらの豆餅は、古く奈良時代からあります。黍(もちきび)を入れると黍餅、ゴマを入れるとゴマ餅になります。

 野菜・海草を混ぜる餅:長崎県島原や土佐、紀州には、サツマイモを輪切りにして干し、モチ米と一緒に蒸してつくった、かんぱ(ペ)餅があります。サツマイモをふかし、とっておいた餅をのせて更に蒸し、それをこねてつくるのが芋餅。つぶあんを入れ、きな粉をまぶして食べます。青のり粉を混ぜる青のり餅は、風味豊かで、色どりも美しい餅です。季節によって里芋をつきこむところもありました。

 草木の芽・木の実を混ぜる餅:平安時代の辞典『倭名類聚抄』に、(くさもちい)という言葉がでています。これは、米の粉を用い、春の七草のひとつ、ははこ草をつきこんだものと考えられます。今でも草餅には、モチ米とウルチ米を使う2種類あり、草には主によもぎが利用されます。江戸では草餅、京阪ではよもぎ餅と呼ぶのがならわしだったようです。
 木の実といえばトチの実。1330年代の「異制庭訓住来」に粟餅と黍餅とともに名を連らね、今日でも各地でつくられています。トチの実は、あく抜きがとても煩わしいのですが、一種独特の香ばしさが魅力です。モチ米1、トチの実1の割合が一般的で、モチ米はつなぎ材の役目をしています。トチの実のあく抜きの技術は縄文人の発明です。水と灰と土器と火のドラマです。

 そのほかの餅:砂糖や塩を混ぜる餅もあります。塩が貴重品だった頃、三重県名張地方では、餅に塩をたくさん入れ、料理の味つけに、それを削って使っていました。ニガリを含んだ昔の塩は、湿気の多い所で壺に貯蔵しておくと、湿気を含んで溶けてしまうことから、それを防ぐために餅に混ぜたと思われます。餅に砂糖を少量つきこむのは主としておかき用です。砂糖が入ることによって焼いた時おかきがよくふくらむのです。近頃では、干しエビをつきこんだエビせんがあります。


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