メタボリックシンドロームの保健指導とその効果

あいち健康の森健康科学総合センター副センター長
津下一代先生

特定保健指導がめざすもの

 平成20年度から開始された特定保健指導は、メタボリックシンドロームの概念を活用して健診の受診者から保健指導の対象者を選定し、6カ月間にわたる生活習慣の改善支援を行うものです。特定保健指導では、エネルギーの収支を改善することにより、内臓脂肪の減量をめざします。そのため、総摂取エネルギーと栄養素バランスの適正化を中心とした「食事指導」。そして、日常の生活活動の活発化を含めた身体活動量を増やすための「運動指導」が中心になります。
 私たちは、@エネルギー摂取量を減らす減量期〔3カ月間で3s(体重の4〜5%)を目安に〕、A長く継続できる維持期、に分けて指導しています。

減量で脱メタボリックシンドローム

 全国31医療保険者(7国保、24健保)で実施された14の保健指導プログラム(積極的支援)で、6カ月間の特定保健指導を終えた方を対象に行った調査によると、平均で3kg体重が減り、54%の方が脱メタボリックシンドロームに成功しています。体重の4〜6%の減量により血圧は下がり、中性脂肪も減って、善玉のHDLコレステロールは増えています(図1)。

<図1 6カ月間の特定保健指導(積極的支援)後の体重の変化率と検査値の変化>

図1 6カ月間の特定保健指導(積極的支援)後の体重の変化率と検査値の変化

 生活習慣病を予防するとされるアディポネクチンの値も上がっていました。
 検査数値の改善は4%減量以上ではっきり出てきますので、減量の目標は4%以上の減量を一つの目安とするのがよいと思います。
 例えば、75sの人なら3sの減量です。3カ月で3s減量、その後の3か月は維持期とし、体重測定を継続してリバウンドしないような体重管理ができるようになると、保健指導を終了しても体重を維持できるようになります。1カ月あたり1sの脂肪量減少のためには、エネルギー収支が約7,000kcalマイナスとなればよく、1日あたり約250 kcal減らせばよいことになります。たとえば、缶ビール1本減らすことにより、約150kcalの節約につながり、歩行を30分増やすことにより約100kcal消費されます。激しい運動をする必要はありません。
 このように最初は食事改善から始め、ウォーキングなどゆるやかな運動に徐々に慣れていくと継続しやすくなります。ある程度体重が落ちて維持期になれば、毎日体重計にのるくせをつけながら、食事は2日単位、運動は週単位でルールを決めてかまいません。

ライフタイルを見直す機会に

 特定健診で渡された検査の数値は、自分自身の今の状態をあらわしています。せっかく受けた健診ですから、メタボリックシンドロームの有無にかかわらず、結果をしっかりと受け止めて今後に生かしたいものです。
 特定保健指導は、改善に取り組むのが本人というところに特徴があります。なぜ体重が増えているのか、どうすればそれを減らすことができるかを考え、体重やお腹まわりをチェックしながらライフスタイルを見直してみることが大切です。

保健指導終了後も体重を維持するために
−食事の「型」をつかむことが大切−

 一時的に減量するためには、間食や嗜好飲料などを減らすことで達成することは可能ですが、長期的に健康を維持していくためには、食事の量とバランスについて、食事の「型」を意識してもらうとよいでしょう。
 ごはんを主食とした伝統的な和食は、塩分を控えめにすれば理想的な食事です。
 一定量のごはん(主食)、手のひら大のたんぱく質をメインとしたおかず(主菜)、野菜を中心としたおかず(副菜)を組み合わせ、おかずの内容を変化させることによって食を豊かにすることができます。盛り付ける皿の大きさを決めておくことで、食べ過ぎにならないように調整することもできます(図2)。
「毎食カロリー計算を」といった画一的な指導ではなく、「本人ができること」を具体的な目標にすることが大切です。

<図2 食事バランスガイドや御膳(ランチョンマット)を使って食事の「型」を意識してもらう>

図2 食事バランスガイドや御膳(ランチョンマット)を使って食事の「型」を意識してもらう

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