パネリストからの提言:動脈硬化疾患の予防と食習慣

日本医科大学内分泌代謝内科・教授
及川眞一先生

動脈硬化の予防にはコレステロールを減らすだけでは不十分
ごはん中心の日本型食生活を見直しましょう

 日本人の死因の第2位(心疾患)と第3位(脳血管疾患)を合わせると、第1位(悪性新生物;がん)とほぼ同数になります。心疾患と脳血管疾患はベースに動脈硬化があり、その予防は非常に重要な課題です。また、最近注目されているメタボリックシンドロームも、放置するとやがては動脈硬化に至ることから、その仕組みを解明しつつ、予防法について考える必要があります。
 動脈硬化とは、動脈の内側にコレステロールなどが付着し、血管壁が厚くなり、血管が硬くなることをいいます。初期には自覚症状がありませんが、血流が悪化し、やがて脳や心臓に十分な血液がいかなくなります。また、もろくなった血管からプラーク*1がはがれ落ち、それが血管の途中に詰まることが起こったりします。これらのことをきっかけに、危険な状態へと進んでしまうのです(図1)。

図1:心臓や脳の血管で動脈硬化が起こると重大な病気に!

 この動脈硬化を引き起こす因子としてはLDL-コレステロール*2の増加があります。しかし、動脈硬化の治療は単純にLDL-コレステロールを下げる治療だけでは不十分であることがわかってきました。肥満や高血圧、脂質異常、糖尿病などの危険因子が重なり合うメタボリックシンドロームの改善も併せて考えることが必要になってきたのです。
 動脈硬化性疾患の一次予防・二次予防*3には、運動と食習慣の改善が挙げられます(図2)。まず運動から考えると、人によって異なりますが、「ちょっときついかな」という程度の運動を1日20分以上すると効果的です。これを少なくとも半年程度続けると、血圧や中性脂肪、血糖値などの改善といった有効な効果が得られます。まとめて20分の運動が難しくても、5分の運動を4回行うだけでも効果がみられますので、意識して継続的に取り組みましょう。

図2:動脈硬化の発症と進行の予防対策(大きなサイズでご覧いただくにはこの図をクリックして下さい)

 一方、食習慣との関係でみると、動脈硬化性疾患の予防が期待できる食事法として地中海食が報告されています。また、日本人のエビデンスとしては、魚油に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)*4摂取の有効性があります。つまり食習慣を変化させることで、動脈硬化の発症を予防できると考えられるのです。塩分を控え、コレステロールや脂肪をとり過ぎない食事を意識することが大切です。
 現在の食環境は、エネルギーや脂肪が豊富なものにあふれており、また、かまずに食べられる食品が多くなっています。そこで見直したいのが、ごはん食です。ごはんにはコレステロールが含まれておらず、脂肪も少ないため、主食に適しています。それだけでなく、EPAの摂取源である魚や食物繊維の豊富な野菜との組み合わせがしやすく、油脂成分の摂取を抑えることも容易です。ごはんは粒のまま食すことから、咀嚼が促されるため満腹感が得られやすく、食べ過ぎが防止でき、さらに記憶力向上にもつながるとの研究もあります。
 こうしたメリットを踏まえると、ごはんを中心とした日本型の食生活により、肥満やメタボリックシンドローム、さらには動脈硬化の予防が期待できるのです。

【用語解説】

*1 プラーク

動脈の血管壁に沈着した脂肪の塊。プラークが破裂すると、致死的な脳心血管障害を招くこともある。

*2 LDL-コレステロール

LDL(低比重リポ蛋白)と結びついたコレステロール。全身にコレステロールを運ぶ役割があるが、過剰になると血管内にたまりやすいため、「悪玉コレステロール」とも呼ばれている。

*3 一次予防・二次予防

一次予防は、病気にならないようにする予防。二次予防は、なってしまった病気をそれ以上悪くならないようにする予防

*4 EPA

青背の魚に多く含まれる成分で、動脈硬化の予防などが期待される。


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