女子栄養大学副学長
自治医科大学名誉教授 香川靖雄 先生

 
朝ごはんが家族をシアワセにする!
朝食と成績の相関図 北京オリンピックで大活躍した選手達。彼らはけしてウォームアップを欠かしません。同様に、朝食は大人にも子どもにも欠かせないまさに1日の活動のウォームアップです。実際に、朝食後に体温も心身の活動力も上がります。朝食と成績の関係について2004年に文部科学省が行った調査によると、朝食を食べている生徒は、欠食している生徒に比べ、いずれの科目でも約2割成績がよくなっています(右図)。
 
 朝食の効果は集中力だけではありません。最近は「キレる」子どもが増えていると言われますが、特に、肉体と精神のバランスが不安定な思春期の子どもにとって、少なからず食事が関係していることがわかってきました。朝食を欠食すると血糖が低下するとともに、闘争ホルモンであるアドレナリンが分泌されると言われています。また、朝食を欠食する人は、栄養の偏りが目立つ人が多いのです。そして、家族が揃って食事をする機会が少ないなど、精神的な環境にも影響されているのです。一方、朝食をとることで、規則正しい生活が生まれ、落ち着いた気持ちで1日を始められます。朝食を抜くことで、集中力が低下したり、イライラしたりするのは子どもも大人も同じです。
 
 朝、主食のごはんを食べることで、脳の唯一のエネルギー源であるブドウ糖が供給され、それによって脳が目覚め、集中力や学習能力が高まります。そして、ごはんは、魚、大豆、野菜、海藻など健康によい日本型食生活の基本です。家族みんなが1日を楽しく過ごすために、朝ごはんは欠かせないのです。
 
朝ごはんが体内リズムを整えてメタボを防ぐ
 せっかく作ったのに、食欲がなくてご主人や子どもが朝ごはんを食べてくれない。そんな経験は誰にもあると思います。ただそれが頻繁に続くようなら、体内リズムが崩れているのかもしれません。人間の活動は日周リズム(概日リズム)という睡眠と覚醒の周期によって支配されているのですが、実はこの周期は暗いところで生活すると24時間ではなく、25時間でリズムを刻むようになっているのです。これが“ほぼ1日”つまり概日リズムとも呼ばれる理由です。この日周リズムは、光に当たったり、朝食をとることによって、24時間のリズムが保たれているのです。
 
 最近、注目されているメタボリックシンドロームの原因は、脂肪のとり過ぎや運動不足ばかりでなく、朝食の欠食などの生活リズムの狂い、体内リズムの崩れも主な原因と考えられています。メタボリックシンドロームの予防には、脂肪のとり過ぎを改め、朝食をきちんととることを強くすすめます。
 
 そして、朝食には、低脂肪で、でんぷん質食であるごはんを主食とした栄養のバランスを考えた食事を心がけましょう。実際、規則正しい生活と1日約1万歩の運動でメタボリックシンドロームを治療したクリニックもあります。
 
 現代人はつい夜更かしして体内リズムを乱しがちですが、メタボリックシンドロームを防ぐ重要な役割が朝ごはんにあるのです。